波エネルギー利用の海水導入工の開発 ―種々の制約条件下での海水導入技術―

[要約]漁港周辺の水質改善・維持するために波エネルギーを利用した海水導入工を開発している。しかし、本工法には、以下のような課題があった。
 (1)大潮位差の地域では、十分な導水性能が得られない。(2)水深10m以上の水深ではコストがかかる。(3)導入した海水を本施設から離れた地点に配水する場合の計画・設計手法がない。
この点について水理模型実験、数値計算等で検討し、実用的な海水導入工を新たに開発した。

水産工学研究所・水産土木工学部・水理研究室

連絡先

0479-44-5939

推進会議
 

水産工学
 

専 門
 

水産土木
 

対 象
 


 

分 類
 

研究
 

【背景・ねらい】
 漁港内の泊地は、閉鎖性が強く、漁業生産活動に伴う汚水・生活雑排水等により、水質・底質が悪化している場合が多い。一方、泊地内での漁獲物や種苗の蓄養の要請が高まっている。漁港内で対象生物を健全な状態で蓄養するためには、水質・底質を良好な状態に改善あるいは保全しなければならない。このような背景から、漁港内の水質・底質を改善するメンテナンスフリー型の海水導入工の開発が始められた。しかし、漁港の地形、海象条件は、地域によって異なり、最適な構造形式はこれらの条件によって異なってくる。本研究は、潮位差の大きな場合、水深が大きな場合、海水導入地点と配水地点が離れている場合等の諸条件について最適な海水導入工の開発を目的としたものである。

【成果の内容・特徴】
 ・潮位差の大きい漁港での海水交換の場合には、海水導入工を潮位の大きさに応じて適切に変えた多段型の構造にすることによって、ほぼ常時十分な海水導入が行える。この構造は入射波高約 30cmで有意な海水導入量が得られる。また、潮汐による流れと海水導入工による海水導入を合わせた漁港内の海水交換率を数値計算し、評価する手法を開発した。
 ・水深が深い場合において海水導入を考える場合、従来の海水導入工は、潜堤部の体積が大きくなり不経済となる。このため、防波堤本体内部に海水導入工を組み込んだ構造を開発した。これによって、従来工法より経済的となるばかりでなく、任意の水深に海水導入が可能となった。任意の水深に海水導入できるメリットは、水深が深い場合、一般的に底層付近が貧酸素状態になるが、この部分に豊富な酸素を含んだ海水を供給できることである。これにより底層付近の溶存酸 素濃度を増加させて底層付近の良好な生物活動を支えることができる。
 ・海水導入工の位置と配水地点が離れている場合においては、海水導入工から配水地点まで管路、開水路で連絡することによって、海水導入が可能である。その際水路の損失をできるだけ押さえることが重要である。また、複数の海水導入工がある場合では、貯水槽に導入水を集水し、配水点まで単一の水路で連絡すれば経済的である。
  以上により、多様な地形条件、海象条件下に対応した海水導入工の計画・設計が可能となると 考えられる。

【成果の活用面・留意点】
 全国各地の漁港で海水導入のための計画があるが、ほぼこれらの要請に応えることができると考えられる。現在、このほかの海水浄化技術を含めたマニュアルを作成中である。また、整備済みの海水導入工に関して、その周辺の水質・底質のモニタリングを施している。今後は、中小規模の閉鎖性水域の浄化に関する本技術の適用性や新たな技術開発を検討する予定である。

【具体的データ】


                  図1 種々のケースの対応方法



 
 図2 1潮汐後の港内水の流動状況
海水導入した方(下段)が新鮮な海水(白い部分)が多くなる



 図3 潮汐+海水導入のある場合の港内水の残留率 →| 200m |←


【その他】
 研究課題名:自然エネルギーを利用した水質改善技術の開発、漁港内水環境の解析と評価
 予算区分:漁港漁村・経常
 研究期間:平成3〜12年度
 研究担当者:山本 潤・大村智宏・中山哲嚴
 発表論文等:(1)山本 潤・中山哲嚴・中村克彦:大水深における海水導入施設と防波堤
         の一体化に関する実験的研究、水産工学研究所技報、第19号、1997
         (2)大村智宏・中山哲嚴:潜堤付海水導入工の適用範囲拡大に関する研究、
         水産工学研究所技報、第20号、1998