箱網の目合拡大による操業の効率化

[要約]潮流の速い海域で操業する定置網にとって、網成りの保持揚網回数の確保は、漁業経営上重要な課題である。府内の定置網漁場において異なる目合の箱網を使った操業試験を実施し、箱網の目合を拡大する方法が、網成りの保持や揚網回数の確保に有効であることを明らかにした。

京都府立海洋センター・海洋調査部・漁海況グループ

連絡先

0772-25-3078

推進会議
 

水産工学
 

専 門
 

漁業生産
 

対 象
 

魚類
 

分 類
 

普及
 
【背景・ねらい】
 今後の定置網の操業において、効率的漁獲と有用魚種の幼稚魚の保護はともに重要な課題である。
これまでに、箱網の魚捕部分の目合拡大が、有用魚種の幼稚魚の保護にとって有効であることを明らにしてきたが、箱網全体の目合拡大による網成り、漁獲等への影響については不明である。また、一度網内に入った魚群を確実に漁獲するためには、箱網の網成りが重要な要素であり、箱網の網成りと漁獲量との関係を明らかにする必要がある。
 そこで、定置網漁業の経営安定を図る方策の一つとして、この箱網の目合拡大の効果を明らかにするための操業試験を実施した。
 
【成果の内容・特徴】
・ 二段落網型定置網の場合、2種類の箱網で揚網直前の第二箱網の網容積率(揚網直前の推定網容積 /設計時網容積)と漁獲量との間には、正の相関関係が見いだされた。魚捕部分を除く箱網の網目か らの魚の逃避については未確認であるが、箱網の網容積率を高く保つことが、両網ともに漁獲量を 増大させることに有効に働く可能性の高いことが示唆された。(図1)
・ 魚捕部分を除く第二箱網の目合を12節(脚長27.5mm)から6節(脚長60.6mm)に拡大することにより、 速い流速時にも、箱網容積率をより高く維持できることが明らかになった。(図2)
・ また、このように箱網の目合を拡大することにより、当該漁場の操業で、目合の小さい箱網の使 用時に比べて、速い潮流時の操業不可能事例が少なくなった。(図3)
・ その結果、箱網の目合拡大が漁獲の効率化に寄与することが示唆された。
 
【成果の活用面・留意点】
・ 「箱網の魚捕部分の目合拡大」は、有用魚種の幼稚魚保護のために重要であり、広く府内定置網 に普及できるかが今後の課題である。目合の大きい箱網の導入を積極的に働きかけると同時に、魚 捕部分の目合も拡大するよう働きかける必要がある。
・ 目合を拡大した場合、箱網の魚捕部分以外の部分から小型魚が逃避するかどうかを確認する必要 がある。(箱網の魚捕部分から抜けることは確認済み。)
 
【具体的データ】

 
 図1 第二箱網の網容積率と漁獲量との関係


 
 
              ●;脚長60.6mm,○;脚長27.5mm
          図2 流速と第二箱網の網容積率との関係


 
  図3 流速と揚網不可日との関係

 
【その他】
 研究課題名:固定式漁具の漁具構造と魚介類性の関係に関する研究
 予算区分:水産業関係新技術地域実用化研究促進事業
 研究期間:平成 9〜11年度
 研究担当者:上野陽一郎
 発表論文等:京都府立海洋センター研究報告 20pp48-55((1998)
       京都府立海洋センター研究報告 22(投稿中)