(成果情報名)地理情報システムを活用した沿岸漁場情報データベースの構築 |
[要約]沿岸域における水産資源の管理、魚礁の配置計画や魚礁機能の検討、漁場行使の利用計画策定等々の支援ツールとして、地理情報システムGeographic Information System (GIS)を活用した沿岸漁場情報データベースを構築した。 |
水産工学研究所水産土木工学部開発システム研究室 |
連絡先 |
0479-44-5936 |
推進会議 |
水産工学 |
専門 |
水産土木 |
研究対象 |
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分類 |
研究 |
水産研究技術開発戦略別表該当項目
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1-(2)資源評価管理に関する情報処理技術の高度化
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【背景・ねらい】
生態系に配慮した漁港漁村・漁場等の水産基盤整備事業を行うためには、対象海域の環境情報や対象種の生物生態学的知見に基づき、計画段階では自然環境を損なわない開発計画を策定すること、実施段階では自然環境への不可避な損失を補償する措置が不可欠である。
沿岸域は様々な社会経済活動が輻輳かつ最も活発な地域であるため、海域環境、漁業情報、各種統計、リモートセンシングデータ、波浪潮流等地理的情報を含む沿岸域情報や水産有用種の生物生態学的知見は、都道府県別、海域別、各種事業別、継続的に取得されている。しかし、データが時空間的に不均質、不連続、調査仕様が不統一、有用種に限定、記憶媒体の多くが紙、電子情報も記憶様式が異なる等、これら情報を総合的に保存管理し生態系評価に利用し得るデータベースの必要性が認識されている。そこで、魚礁の配置計画、魚礁機能の検討の支援ツールとして、GISを活用した沿岸漁場情報データベースを構築することを目的とした。
【成果の内容・特徴】
時空間的に不均質、不連続であるが地理的情報を含む環境情報、生物情報を共有するツールとして、汎用性、拡張性、作業性等を勘案して、電子地図とデータベースを結合し、空間解析機能を持つGISソフトとして米国ESRI社製ArcViewを導入した。
電子地図(日本近海等深線デジタルデータ、統合海岸線デジタルデータ、航海用電子海図、沿岸の海の基本図、数値地図等)や公刊データベース(魚礁台帳、人工礁漁場造成事業効果調査資料集、油汚染漁業影響情報図、漁業センサス、港勢集等)を整備しGIS上で利用可能な形式に変換した。
GIS利用方策の一環として、天然礁の立地条件を探る観点から、ArcViewの持つ空間解析機能を利用した海底地形解析機能を組み込み、礁、碓等の海底地形変化と魚礁漁場における漁獲成績を比較し、魚礁の配置計画や魚礁機能について検討を行った。
【成果の活用面・留意点】
東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の内湾を対象とした電子海図は、陸域の地形図と同程度の縮尺で表示される。一方、外海域では概ね1/100,000-1/300,000であるため、電子海図から水深データを読み取り鳥瞰図を作成する場合、大水深域での水深データが少ないため、海底地形が不自然となる。500m間隔毎に水深データを与えた場合、概ね海底地形は再現されるが(図1)、魚礁漁場の立地条件等の検討には、100m間隔以下の詳細な水深データ(沿岸の海の基本図等)が必要である。但し、@海図等の「紙」情報を電子情報への変換は極めてman-powerに依存する。A地先毎の漁業実態を示す系統だった公刊資料が極めて少ない。B魚礁効果調査等にDGPSの活用が必要となる。
【具体的データ】
構築したデータベースの表示例として、三浦半島西海域における海底地形と魚礁漁場効果調査結果を表示した。図1、2を比較すると、平面的な表示例(図2)では読み難い漁場の位置関係を
GISの空間分析機能を利用した表示(図1)を活用することにより、3次元的、立体的、直感的に認識できる利点を有する。漁業者は海底谷から海丘に至る「法面」「肩部」を天然礁と認識しており、海底地形と天然礁の形成関係が理解し易いことが分かる。
図1 海底地形の表示例(水深読取:500m間隔) 図2 魚礁効果調査データの表示例
【その他】
研究課題名:地理情報システムを活用した沿岸漁場情報の統合(水産基盤整備事業委託費)
研究期間:平成11-13年度
研究担当者:明田定満(水産土木工学部開発システム研究室)
発表論文等:明田他2名:地理情報システムを活用した魚礁漁場情報のデータネース化、平成13年度日本水産工学会学術講演会講演論文集、pp.33-34、2001