定置網漁場診断による漁具被害防止
[要約] 定置網の流出固定具の事故が多い。そこで、19トン型調査船うしおとROVにより固定具の水中診断を実施した。その結果、損傷箇所の早期発見による事故防止が図られ、また固定具の特性解明により設計改善にも活かされる。
神奈川県水産総合研究所相模湾試験場 連絡先 0465−23−8531
推進会議 水産工学 専門 漁業生産 対象 魚類 分類 普及
[背景・ねらい] 相模湾試験場では急潮や波浪から定置網を守る対策研究に取り組み、回流水槽実験により、大浮子の浮力や形状の改良等が定置網の抵抗減に有効であることを明らかにして現場に活かした。一方、事故原因を究明する中で錨や土俵の移動や網類の切断が非常に多いことが判り、水槽実験と並行して現場の固定具に関する研究が必要となった。しかし、これらの箇所は、大水深(50〜150m)や網類の長さ(150m〜250m)から原因の研究が困難とされ、本県を始め全国の定置網漁場でその研究方法の開発と固定具に関する研究が望まれていた。
[成果の内容・特徴] 
(1)漁場診断 平成9年〜平成12年6月までに延べ45回の漁場診断(図表照)を行った。45件の危険個所(錨の転倒、ワイヤーロープの被覆剥離等)、67件の注意箇所(錨の潜掘、錨鋼の交差)を発見し、事故防止に役立った(表参照)。
(2)固定具の種類による障害特性(金錨,土俵,コンクリートブロック) 金錨は水面からの投入による転倒が多く、また、海底流による潜掘が把駐力を減少させる。土俵は石廻しの隣接部の重なり損傷が多く、また、軟泥地質では緩傾斜面でも土俵の滑動が起こる。コンクリートブロックの安定度は高いが、残置により障害物となり、漁場の安全性を阻害する。
(3)網類の損傷特性(ワイヤーロープ,化繊ロープ) ワイヤーロープは流向流速により海底着低距離が変化し、小石等の障害物との擦れにより表面被覆は短時間で破損する。化繊ロープ(軽比重)は流向流速と付着物量の関係により沈下傾向が変化し、岩礁部との接触、切断が発生する。
[成果の活用面・留意点] 漁場毎の固定具、網類の損傷特性から固定システム改善の必要性を漁場と協議し、固定具の設計指針を作成中である。
[具体的データ]
[その他]
・資料名
石戸谷博範(1999):定置網の安全対策−T,自走式水中カメラによる錨・土俵の調査,ていち,96,15−25.
石戸谷博範(2000):相模湾における定置網を急潮から守るマニュアル,ていち,97,1−23.
・研究課題名:漁業生産技術開発試験
・研究期間:平成9〜
・研究担当者:石戸谷博範