イカ類の散乱特性の実験的解明のためのターゲットストレングス測定機構の開発
[要約]TAC(漁獲可能量)対象種であるスルメイカ等頭足類の資源量推定は、水産資源の持続利用の上からも緊急かつ重要性の高い問題である。この研究では、従来測定が困難とされてきた頭足類のターゲットストレングスTS)を精密に測定する装置を開発し、計測システムの高精度化を図った。
水産工学研究所・水産情報工学部・資源情報工学研究室・海洋情報工学研究室 連絡先
 
0479445947
 
推進会議 水産工学 専門 測器 対象 頭足 分類 研究
                 

[背景・ねらい] 

 TAC対象魚種であるスルメイカ等頭足類の資源量を、音響調査手法によって推定するためには、その音響的な特性、特に単体の反射の強さであるTSを明らかにする必要がある。しかし、頭足類は魚よりも反射が弱く脆弱で、形状が不安定であり、測定が困難なため断片的な報告しかなかった。さらに、既存の魚体用のシステムでの精密測定には限界があり、新たな測定手法を開発する必要がある。

[成果の内容・特徴] 

 頭足類の群に対して音響調査を行うと、その分布密度とTSとの積が得られる。そこで、この結果からその分布密度を知るためには、そのTSを明らかにしなければならない。

 従来、魚を対象としたTS測定システムでは、水中に懸垂した魚の姿勢を変化させながら超音波を当て、返ってきたエコーレベルを測定していた。これは、魚の反射がその姿勢によって大きく変化するためである。しかし、この方法では、頭足類のように脆弱で、形状が不安定なサンプルを損なうことなく測定できない。そこで、サンプルを水中に固定し、超音波の送受波器の位置を移動制御してTSを測定する方法を開発した。(図1.参照)

 測定環境条件として、頭足類は海中に生息するため、海水循環浄化設備を持つ、2m(幅)×3.5m(奥行き)×2m(深さ)の無響水槽内で測定することとした。

 測定条件の設定では、近距離音場を避け、ビーム内でサンプルに均一に音波が当るように考慮した。さらに、伝播距離をパラメーターとして、この条件に合う送受波器のサイズと周波数を決定した。

 上記の検討結果から、比較的感度が良く、大きなサンプルを測定できる送受兼用型送受波器を搭載するものとして、サンプルのまわりに送受波器を周回駆動するターゲットストレングス測定機構を設計・製作した。(図2.参照)

 送受波器の周回半径は可変で、最大1.5m、その時の周回範囲±50°、最大荷重20kgf、最小ステップ角0.5°、精度0.02°とし、周回角度の制御には絶対値エンコーダを採用して制度を保った。また、パソコンにより、周回駆動する測定機構を制御するプログラムを開発した。

[成果の活用面・留意点] 

今後、超音波送受信系を整備して、頭足類のTSを測定する予定である。さらに、旋回アームを改造することによって、送受分離型送受波器にも対応できるように配慮したので、頭足類よりもさらに反射が弱いために測定の困難なオキアミ等のTS測定も可能となり、音響手法による資源量評価が可能な対象範囲は大幅に拡大すると思われる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名:イカ類の散乱特性の実験的解明

予算区分:経常研究

研究期間:平成913

研究担当者:宮野鼻洋一、澤田浩一、石井 憲、名波 敦

論文発表等:Transducer Positioning System for Target Strength Measurement of CephalopodElectronic Proceeding(CDROM) of International Symposium on Advanced Technipues of Gear and Acoustical Surveys for Estimation of Fish Abundance and Behavior (ACOUSTGEAR 2000)in press