魚群監視装置による魚群映像面積と漁獲量の相関について
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[要約]
魚群監視装置に映った魚群映像面積と漁獲量の関係について調査した。その結果、魚群映像面積と漁獲量の間には、箱網内に存在する魚種により、正の相関が強い魚種とそうではない魚種が見られた。また、魚群映像面積の掲示変化には、いくつかのパターンがみられた。 |
神奈川県水産総合研究所 相模湾試験場 |
連絡先 |
0465-23-8531 |
推進会議
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水産工学
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専門
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漁業生産
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対象
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魚類
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分類
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普及
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【背景・ねらい】
小田原市の米神漁場に導入されたモデル定置網には、先端機器として魚群監視装置及び漏斗口遮断装置が装
されている。その使用方法としては、魚群監視装置によって箱網内の魚群量を把握し、漏斗口を遠隔操作によ
って遮断することにより魚群を箱網内に閉じこめることを主としている。しかし、漏斗口を遮断するというこ
とは、箱網内から魚群が逃げないのと裏腹に、それ以上魚群が入網しないことを意味しており、実際に遮断装
置を作動させるには、魚群監視装置の画像をどう判断するかが重要となる。また、定置網箱網内に入網した魚
群の多くは再び出網してしまうことがこれまで報告されている。そこで、漏斗口遮断装置の利用方法の一つと
しては、網箱内に入網するときは遮断せず、出網する時間帯だけ遮断することにより箱網内への居残り率が増
加し、しいては漁獲量の増大につながるのではないかと考えた。
そこで、
箱網内魚群量と魚群監視装置の映像との関係、及び魚群の入網・出網時刻を魚群監視装置の映像から把握し、
漏斗口遮断装置の効果的な使用方法を検討することを目的として試験を行った。
【成果の内容・特徴】
魚群監視装置は2個の振動子からなる魚群探知機が装備されており、これら振動子は箱網中央部及び登網中央
部設置されている。このうち、箱網中央部に設置した振動子からの魚群映像面積と漁獲量の間には、弱い正の相関
しか見られなかった(図1)。この原因として、箱網内を占有する魚種によるもの、あるいは魚群監視装置の探
査範囲が箱網容積の約13%にすぎないことから、魚群分布の偏りによるものがあることが示唆された。また、
魚種による違いをも見てみると、マアジは比較的強い正の相関が見られた。(図2)
魚群映像面積の形状変化は、主に3つのパターンが見られた。それは、昼間のみに魚群映像面積のピークが出
現するパターン(パターンT)、一日中、魚群映像が見られなかったパターン(パターンU)、そして午前中及
び夕方以降に魚群映像面積のピークが見られるパターン(パターンV)の3パターンである(図3)。このうち、パ
ターンVが示すのは、午前中一旦入網した魚群が出網してしまい、夕方、再び魚群が入網することを示唆している。
また、パターンVを示したときの入網魚種は、イワシ類が多かったが今後より多くの事例を調査する必要がある。
【成果の活用面・留意点】
魚群映像面積と漁獲量の間には、魚種によって正の相関が見られ、網締め前に漁獲量の大まかな推定ができる。
魚群映像面積の経時変化から、漏斗口遮断装置の活用方法として、魚群の入網時には漏斗口を開け、出網時には
閉めるといった操作をすることにより、漁獲量の増大を図るといったことが考えられた。ただ
【具体的データ】
[その他]
研究課題名:漁業生産技術開発試験
研究期間 :平成10〜11年
研究担当者:石黒 雄一