エコートレース解析による魚種判別・体長推定手法の開発のための基礎実験

[要約]音響資源調査において、魚種判別体長推定は、生物サンプリングにより確認している。音響手段だけで、この確認ができれば、より精度の高い調査が可能となる。
 また、漁船にこのような機能を持たせた魚探を搭載することにより、選択的な漁獲が可能となり、資源を有効に使うことができる。そこで、エコートレ−ス解析による魚種判別・体長推定手法の開発のための基礎的研究を行った。

水産工学研究所・水産情報工学部・資源情報工学研究室

連絡先

0479-44-5948

推進会議
 

水産工学
 

専 門
 

測器
 

対 象
 

浮魚
 

分 類
 

研究
 

【背景・ねらい】
浮魚などの水産資源量の直接推定法として計量魚群探知機を用いる音響手法が一般的である。音響手法は、魚群から返ってくるエコーのエネルギーが魚群量に比例するという原理に基づいている。しかしながら、返ってくるエコーがどの魚種のものか、個々の体長はいくらかといったことは、今までわからなかった。
そこで、個々の魚から返ってくる連続したエコーの連なり(エコートレース)の形状やエコー強度から魚の遊泳方向、姿勢、ターゲットストレングス(TS、反射の強さ)のパターンといったものを推定する方法の開発するための基礎実験を行った。TSパターンで、最大TSがわかれば、体長の推定も可能である。

【成果の内容・特徴】
水産工学研究所の大型水槽(15×10×15,長さ、幅、深さ、単位m)で、標準球を一定速度(10cm/s)で上下させ、70kHzの小型計量魚探機で送受信を行いエコー信号を収録した。送信周期は0.267s、パルス幅は0.6msとした。得られたエコーデータについてエコートレース解析を行った結果、音響により位置が特定できること(図1)、推定速度が設定速度に大まかに一致すること(図2)、さらに、得られたTSパターンが傾角によらず一定の値になること(図3)が確認され、この手法による魚種・体長情報の取得の可能性が示された。

【成果の活用面・留意点】
・ オンライン処理を行い、一般の漁船に装備することにより、魚種、体長等選択的な漁獲が可能となる。
・ 自然状態で遊泳方向や遊泳姿勢の情報が得られるので、資源量推定を行う際に必要な平均TSを計算するときに有用な情報となる。
・ 船の揺れは誤差の原因となるので、データ収録は曳航体を使用するなど揺れの少ない状況で行う必要がある。

【具体的データ】
               (単位m)
     図1  音響による推定位置            図2  推定した移動速度
 

            図3  推定した標準球のTSパターン


【その他】
 研究課題名:エコートレース解析法による魚種判別・体長推定方法の開発
 予算区分:特別研究[マリノセンシング]
 研究期間:平成8年〜平成11年度
 研究担当者:澤田浩一
 発表論文等:澤田浩一、他:自然状態にある魚のターゲットストレングス解析用ソフトウエアの開発、日本水産学会秋季大会講演要旨集、pp13(1998)