平成18年度水産工学関係研究開発推進特別部会水産基盤分科会報告

                                           会議責任者:水産工学研究所長

1.開催日時及び場所:日時 平成19年1月25日  場所 水産工学研究所新館大会議室
2 出席者所属機関及び人数 27 機関  48 名
3.結果の概要

議  題 結  果  の  概  要

 干潟漁場の流動・地形特性の計測・解析手法(講演及び演習)


1.研究経過、研究成果に関すること
 干潟の採貝漁場での二枚貝資源の形成には、浮遊幼生の来遊と着底、稚貝・幼貝の輸送と定着といった生活史初期における輸送現象が深く関わっている。そして、浮遊幼生の着底や稚貝・幼貝の定着に強く影響する環境要因として、海底の流動と地形の特徴を把握することに水産研究者の関心が集まっている。このため、干潟における地形測量及び流動計測とデータ解析の実際的方法についての講演及び演習を行った。なお、本分科会は、アサリ資源全国協議会との共催により実施された。
 桑原室長より、企画趣旨、アサリの初期生活史、干潟の物理環境及び稚貝の定着を促進することを目的とした行われてきた土木工学的取り組みについての概説が行われた。稚貝の定着を促進するための取り組みの多くは、海底面の砂の移動を抑え、稚貝を物理的に安定した環境下に置くことを意図したものであるが、海底の流動環境と稚貝の定着過程との関係を明らかにするため、地形と流動を測定するための基本的な知識を調査者が身につけることの重要性が指摘された。
 山内共同研究員より、干潟の測量に用いられる各種の機材と方法の長短及び注意点について説明が行われた。干潟の地形測量には、GPS測量、音響測深、レッド測深等、いくつかの簡易的な方法が挙げられるが、簡便さと精度にはトレードオフの関係があり、目的に応じて使用する機材・方法を選択する必要があることが指摘された。また、水深データから地盤高を推定するための潮位補正の方法として、検潮所の公表値や天文潮位を参照する他、工事用水準点や漁港原点が付近にある岸壁に水位計を垂下して潮位補正のためのデータを得る方法が紹介された。
 川俣主任研究員より、沿岸域における流動の特徴、各種流速計の性質と利用上の注意点について説明が行われた。沿岸域でみられる流れとして、潮流と波動流を挙げ、流速計で測定された2次元流速成分を平均成分と変動成分に分離することによって、それらの特性を明らかにする方法が示された。また、電磁流速計を使用する際の注意点として、付着生物によるセンサーのわずかな被覆でも計測値に影響することの事例が示された。
 なお、希望者に対し、電磁式流向流速計の2次元流速データを平均成分と変動成分に分離する方法を参加者が習得できるように、各自が持参したパソコンに解析用ソフトウェアと例題データをインストールし、川俣主任研究員の指導による演習を行った。

2.当該専門分野の研究の推進方向に関すること及び産・学・官の連携に必要な事項について
 中村部長より、アサリ・干潟関連のテーマを水産基盤分科会で取り上げるのは、ひとまず今回を最後とするが、今年度完成予定の干潟環境実験施設の共同利用を図りつつ、海底境界層におけるアサリ稚貝の定着過程に関する研究を推進していくことが、参加者に報告された。