平成14年度水産工学関係試験研究推進会議
水産基盤部会報告
 
 
主催責任者 水産工学研究所長
 
1.開催日時及び場所
開催日時:平成15年1月16日(木)
場所:水産工学研究所 研究管理棟 会議室
 
2.出席者所属機関及び人数
45機関 98名
 
3.結果の概要
 
議  題 結  果  の  概  要

地球温暖化による水産基盤への影響予測と対策について












































 

1.研究経過,研究成果に関すること。
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の3次報告書によれば,2100年までに気温が最大6.0℃(水温は約4℃程度),水位は最大88cm上昇すると予想されている。我が国は,世界屈指の水産大国であることから,地球温暖化に伴う水温上昇・水面上昇は,魚介類の生息環境や漁業活動,さらには漁港漁村の機能や生活環境面に甚大な影響を与えるものと考えられる。また,その対策には多大な経費と時間を要することが想定される。しかし,これまで地球温暖化に対して,水産分野における影響把握や対応策が十分に検討されていない。このため,早急に地球温暖化に伴う海洋生態系や漁場,漁港・漁村への影響を把握するとともに,地球温暖化の進行に対応した短・中・長期的な対策プログラムを策定することが緊要となっている。

 部会では,このような状況の中,行政からの研究要請もあることから,「地球温暖化による水産基盤への影響予測と対策」を今回のテーマに取り上げた。まず,地球温暖化に対する世界的な研究動向,各省庁や大学における取り組み,次に,農林水産分野における地球温暖化に対する取り組みについて話題提供された。さらに,地球温暖化が漁場漁港等の水産基盤に及ぼす影響について,現在当所において進行中の調査研究の内容を紹介するとともに,技術的な諸問題を整理し,水産工学研究分野において取り組むべき課題等の方向性を検討した。


2.当該専門分野の研究の推進方向に関すること。
 上記話題および総合討論の結果,以下のように意見を集約した。

@地球温暖化研究(環境イニシャチブ)と各省庁で独自に進行中の研究との情報交換を密にし,我が国としても多くの研究成果をIPCCに報告することにより,国際的な地球温暖化研究の進展への貢献が求められている。

A生物影響評価について,低次生態系から積み上げたモデルの検討は,環境イニシャチブで実施中であることから,当所の水産庁委託調査事業では,対象生物と水温の関係に重点をおいた研究を進める。

B施設影響評価について,水位上昇による施設の安全性,機能性,利便性の検討に加え,気温上昇による就労環境の悪化,漁獲物のいたみの影響などについても評価する必要がある。

C過去のデータから水温が急上昇した事例(イベント)について,その時の海洋変動,それに伴う水産生物の応答を詳細に分析して,温暖化による影響予測に利用する事が考えられる。

3.産・官・学の連携に必要な事項について。
 総合技術会議で進められている地球温暖化研究(環境イニシャチブ),各省庁で独自に進められている研究との間で情報交換を密にし,重点的に取り組むべき研究課題の共通認識の醸成や研究実施計画の立案などの連携・協力が必要である。
 
その後の処理等

 
 今回の部会における検討結果を報告書としてとりまとめ,年度内に発行する予定である。