平成13水産工学関係試験研究推進会議
漁業技術・水産調査計測合同部会報告
 
 
主催責任者 水産工学研究所長
 
1.開催日時及び場所
開催日時:平成13年12月13日(木)
場所:水産工学研究所 研究管理棟 会議室
 
2.出席者所属機関及び人数
23機関 52名
 
3.結果の概要
 
議  題 結  果  の  概  要

漁業生産技術の今日的課題−−漁業が環境に与える影響−−


























































 

1.研究経過,研究成果に関すること。
 これまで,漁業は「沿岸から沖合へ,沖合から遠洋へ」と漁業の規模の拡大や効率化を目指して発展してきた。しかしながら,200海里体制への移行にともない,現在では,如何に自国経済水域内の水産資源をよりよく管理し,資源の有効利用を図るかが課題となっている。一方,1992年のカンクーン宣言,1995年の「責任ある漁業のための行動規範」(FAO)以降,漁業のあり方そのものの変革が求められている。
 漁業は,国民へのたんぱく質の供給という重要な使命を担っている。その健全な発展のためには,再生産が可能な資源を持続的に利用し,かつ,多様化する国民の需要に即した漁業生産を行うことが重要である。同時に,魚が生まれ育つ漁場環境の保護,希少生物の保護,さらに生態系と調和した漁業活動,すなわち「環境に優しい漁業」であることも重要となっている。
 このように,21世紀の漁業の維持・発展のためには,漁業生産技術とそれに関連する環境問題を正しく理解し,その認識に立った問題解決へのアプローチが必要である。そこで本部会ではその第一歩として,漁業活動を支える立場から,漁業技術と環境問題の現状,並びにそれらの解決に向けた取り組みについて共通の認識を醸成することを目的に開催した。
 部会では,国連食糧農業機構(FAO)が提唱する「責任ある漁業」と水産庁における環境問題に対する取り組みについての2件の基調講演が行われた。また,関連する話題として,漁業活動の影響に関する4件の講演と漁業活動から派生する問題に関して3件の講演が行われた。
 この結果,漁業生産技術の今日的課題として,以下の点を検討する必要が認められた。

@漁業が希少動物へ与える影響について,さらに注視して,問題が生じる前に解決法を検討する必要性
A混獲回避技術(選択的漁獲技術)のさらなる研究の推進
Bゴーストフィッシングに関する調査と影響調査手法の開発
C漁業が環境へ与える影響に関する評価法の検討
D環境に配慮した漁船のあり方に関する検討


2.当該専門分野の研究の推進方向に関すること。
 上記の講演及び総合討論の結果,以下の重要検討事項を集約した。

@漁業が環境へ与える影響に関する評価法の研究
A混獲回避技術(選択的漁獲技術)に関する研究の推進
Bゴーストフィッシングに関する調査と影響調査手法の開発
C漁船漁業の今後のあり方

 このうち,1),2),4)は,中期計画において漁業生産工学部並びに水産情報工学部が取り組む個々の研究課題の中で,また,3)は水産庁の委託研究として実施中の課題の中で検討すべき重要な事項に位置づけられる。
 今回の部会は,「漁業生産技術の今日的課題−漁業が環境に与える影響−」と大きなテ−マであり,全ての事項を網羅することは出来なかった。しかし,問題解決へのアプロ−チとしては,個々の状況や問題点を正確に把握することが前提となるものの,それに対応した技術的な解決が必要かつ重要であることを再認識できたことは有意義であった。


3.産・官・学の連携に必要な事項について
 上記の1),2),3)は基盤的研究の性質が大きいこと,コストを伴うことなど,民間では実施困難な研究要素が多いことから,当センタ−および大学等公的な研究機関が実施すべき研究である。また,4)の方向性を見出すには,広範囲の関係者との連携・協力が不可欠である。いずれにしても,これらの技術的問題については専門水研である水産工学研究所で実施すべき課題であるので,当所が研究の連携・協力の中核研究機関としての役割を果たすことが重要である。
その後の処理等



 
 今回の部会における検討結果を報告書としてとりまとめ,年度内に発行する予定である。
 ゴ−ストフィッシングに関する調査は,水産庁から委託されている。初年度の成果から早急に業界へ働きかけ,解決しなくてはならない問題があるので,本部会での講演内容を早急にまとめる。