平成13年度水産工学関係試験研究推進会議
水産基盤部会報告
 
 
主催責任者 水産工学研究所長
 
1.開催日時及び場所
開催日時:平成13年12月10日(月)
場所:水産工学研究所 研究管理棟 会議室
 
2.出席者所属機関及び人数
48機関 84名
 
3.結果の概要
 
議  題 結  果  の  概  要

海洋深層水を用いた新たな漁場造成の可能性







































 

1.研究経過,研究成果に関すること。
 低温,清浄,富栄養などの特性を有する海洋深層水の利用が水産,食品,医療,発電・省エネなどの様々な分野で検討され,海洋深層水の取水施設が整備されつつある。陸上取水の場合,深層水は利用後に大部分が沿岸へ放流されるため,沿岸域を肥沃化し,漁場を造成できる可能性がある。また,沖合域でも海洋深層水を取水して漁場造成を行うことを目的とした試験事業が始められている。しかし,漁場造成への海洋深層水の利用例は少なく,不明な点が多い。
 部会では,地方自治体,関係団体,大学,民間企業等を対象に実施した海洋深層水を利活用した地域振興と漁場造成に関するアンケート調査の結果と,海洋深層水の利活用技術に関するレビュー並びに,水産庁で進められている試験研究・事業の現状についての話題提供がなされ,海洋深層水利用による沿岸域の肥沃化や沖合漁場造成について問題点を整理し,水産工学研究としての方向性を検討した。


2.当該専門分野の研究の推進方向に関すること。
 上記話題および総合討論の結果,以下の意見を集約した。

@ケイ酸塩を多く含む海洋深層水の利用は,珪藻プランクトン,海藻による基礎生産を向上させ,漁業生産の底上げにつながる。

A漁場造成を目的とする場合,深層水の大量取水が必要である。

B深層水利用を洋上取水と陸上取水に分けた場合,洋上取水による沖合漁場造成は,現状では費用対効果の面から実現が難しく試験的側面が強い。一方,陸上取水では,発電所が冷却水として深層水を利用すれば,大量の深層水が漁場造成に活用できるが,事業性と大量放流による環境への影響などの問題がある。また小規模な取水施設では,費用対効果の面から多段的利用が必要であるが,利用した後に沿岸に放流する深層水を利用することにより沿岸の漁場造成の可能性がある。

C漁場造成を目的とした放流技術の検討はこれまであまりなく,また現状では海藻や植物プランクトンの増殖効果を費用対効果の算定に盛り込むことが出来ないため,深層水の滞留技術の開発と効果評価手法の確立が今後の課題である。


3.産・官・学の連携に必要な事項について。
 上記課題の解決のため,公的研究機関,行政機関,関係企業,地方公共団体等の間の情報交換が必要であり,重点研究課題の共通認識と共同研究立案のために,本部会での議論が必要であることが認識された。
その後の処理等
 今回の部会における検討結果を報告書としてとりまとめ,年度内に発行する予定である。