平成14年度研究所機関評価会議の結果概要


1 開催日時:平成15年3月28日  13:30〜17:30

2 開催場所:水産工学研究所 研究管理棟 会議室

3 出席者
外部委員:(敬称略,五十音順)
天下井 清(北海道大学大学院水産科学研究科 教授)
児玉 正碩(茨城県水産試験場 場長)
三村 信男(茨城大学広域水圏環境科学教育研究センター 教授)
水産工学研究所:
山本 正昭(所  長)           山越 康行(企画連絡室長)
中村 義治(水産土木工学部長)   武内 智行(漁業生産工学部長)
小田 健一(水産情報工学部長)   白鳥 高志(総務課長)
事務局:
井上 喜洋(企画連絡科長)      大浦 哲也(企画連絡室情報係長)

4 結果の概要
議  題 結 果 の 概 要
主催者挨拶



座長の選出
所長より,外部評価委員の会議出席への謝意が表された。次いで,独立行政法人化後2年を経過した研究所を取り巻く状況並びに最近の研究環境の変化を紹介した。また,研究所の運営,研究及び事業の実施状況等について,多面的な評価を要請した。

天下井委員を推薦し了承された。
議  事
1.水産工学研究所機関評価会議について



所長より,中期計画及び14年度計画の概要,研究評価会議の位置付け,並びに研究業績評価の試行などについて説明した。
「研究業績評価」について,研究以外の社会的貢献などへの配慮など評価基準に関する質問があり,研究業績以外の要素も考慮していること及び現在試行中の業績評価の仕組みを説明した。
2.平成13年度の機関評価会議のフォローアップについて

企画連絡室長より,13年度の機関評価会議における指摘事項に関して講じた対策及び改善方策などを説明した。(5項参照)
研究計画と研究員の採用の関係などについて質問があり,水産試験場とは流動研究員制度などによる研究員の短期受入が可能なこと,次期の中期計画などを念頭に組織のあり方を検討中である旨を回答した。
3.平成14年度の研究所の運営に関する評価



企画連絡室長より,所の組織,部課長会議など基本的運営体制,所の研究活動状況(課題数,研究成果数,連携協力等),水産工学関係試験研究推進会議などの概要を説明した。
研究員39人に対して学位取得者が13人は少ないのではないかとの指摘があり,最近は学位取得者の採用にも努めていること,研究員に対して日頃から学位取得を指導している旨回答した。
4.平成14年度の研究業務に関する評価




各部長より,研究評価部会結果の報告,各部の活動状況及び研究成果,並びに事業関係の実施状況について説明した。これに対して,各委員から,研究内容,成果の活用方法などについて専門的な立場から質問や助言があり,各部長から回答した。

(研究課題の評価結果)
S(計画を大きく上回って業務が進捗)  :2課題
A(計画に対して業務が順調に進捗)   :25課題
B(計画に対して業務が概ね順調に進捗) :4課題
C(計画に対して業務が遅れている)   :無し
5.総合評価


企画連絡室長より,平成14年度の研究所の活動総括として,機関評価会議報告様式に基づき,主要項目について進捗状況並びに自己評価結果を説明した。
審議の結果,座長並びに各委員から研究者数に比べて多くの研究課題及び事業を推進し,一定の成果を挙げており,業務が順調に進捗しているとの評価をいただいた。
6.その他
所長より,各委員の意見や指摘事項を今後の所の運営や業務に活かしたいなど討議に対する謝辞を述べ閉会した。

5 13年度指摘事項等のフォローアップ状況
改善を要する問題点等 すでにとった措置 今後検討するもの
(試験及び研究並びに調査について)
@
業務量と研究者数を勘案すると研究員の増員を考慮すべき。




A生産技術・環境保全技術の向上,生態系への配慮などを考えた総合的かつ系統的な漁業生産技術の研究推進を期待。






・人材確保の一環として,日本学術振興会の平成14年度特別研究員に1名採用され,研究体制の強化に努めている。


・生態系と関連した研究課題として「流域圏における水環境・農林生態系の自然共生型管理技術の開発」など新たな3つのプロジェクト研究で8課題が採択され14年度から研究を開始した。
・水産工学関係試験研究推進会議漁業技術部会において「明日の漁船像を考える」をテーマに設定し,漁業者を含む関係者で産学官の連携や研究方向等を討議した。

・多面的な要素を考慮した研究,或いは総合的かつ系統的研究の効率的推進については,今後とも研究体制の強化や推進体制などを含め検討する。

・次期中期計画で想定している総合的な研究,例えば,船と漁具,乗組員の作業性などを統合した漁業生産システムとしての漁船の開発など,総合的な漁業生産技術の研究発展に努める。現中期計画の期間は,その推進に必要な要素技術の高度化など一層の研究推進を図る。


6 外部評価委員の主な意見と対応方針等
外部評価委員の主な意見 対応方針と実施状況
(試験及び研究並びに調査について)
@
業務量と研究者数を勘案すると研究員の増員を考慮すべきと指摘したが,今年はさらに業務量が増えている。それに対応して増員できたか。


・水研センターとして「研究等支援職員制度」,「センターの人材確保及び育成方針」をつくり,「若手育成型任期付き」の採用を計画しているが,委託事業に対応するためには,人材確保の更なる強化策が必要である。
・次期の中期計画を念頭に研究及び組織の在り方を検討するため,将来構想検討委員会を立ち上げつつある。
(業務運営の効率化について)
@
研究員39人に対して学位取得者が少ないのではないか。


A研究業績評価は,必ずしも研究成果・結果と比例しない。研究業績評価の在り方について幅広い検討が必要である。

創設された国内留学制度,流動研究員制度を利用して資質の向上を図り研究員に学位取得を指導する。また 最近は,学位取得者の採用にも努めている。

現在,本部を中心に方法の改良・試行を重ね,研究成果,努力,貢献度を反映できるよう改良を重ねている。
(試験及び研究並びに調査について)
B
鹿島灘では外海の砂浜におけるヘットランドなどの構造物が,そこに棲む二枚貝に与える影響について懸念すべき問題が提起されている。今後ともこのような地域の問題や要望に対して水産工学的観点から取り組みをお願いする。また,水産試験場に対する協力や助言を期待する。

現在,鹿島灘を対象とした「開放性沿岸域における流動・一次生産モデルの開発」研究を継続している。
ヘッドランドの問題は国土交通省が対応すべきと考えるが,地域で生じている諸問題に対して,今後,水産工学の立場から水試と協力して地元へ対応したい。
(社会貢献について)
C
北欧のように喫水の深い漁船が建造されることになれば,漁港の建設にも大きく影響する。したがって,環境,漁船,漁具等,全体を関連づける研究を進めるとともに今後の水産業の在り方についても関係者で幅広く論議することが大切である。

漁船の研究は,漁場,漁船,漁具,漁港,並びに経営問題を含めた生産手段のトータルシステムとして,研究を捉える必要があると認識している。
(研究成果の公表等について)
D
水産土木部門の研究論文の発表先が海岸工学論文集に集中している感じがする。内容に合った学会へ公表するべきでないか。

E水産工学研究所の研究者が発表した各種の研究成果,論文の要約版などの情報を水産試験場へ提供願いたい。

日本水産工学会誌など内容に見合った学会への投稿を指導していきたい。


研究報告,技術報告の要約,主な研究成果は広報誌「しおさい」並びにホームページに要旨を掲載している。今後,学会誌等への発表課題リストを「しおさい」並びにホームページに加え掲載したい。
(その他:次期計画に関して)
F
次期計画の策定時には,社会的ニーズに対し多面的・全面型対応で行くのか,選択・集中型で対応していくのか十分検討する必要がある。




G国研の研究成果が政策決定に使いにくい傾向がある。これから社会的要請にどのように応えていくか十分検討し,成果の受け渡し先等を含め研究の方向性を決める必要がある。

H漁港も産業面だけでの対応を考えていると行き詰まる。これからの漁港研究は,漁業者以外の人々のために何をするか,を考えるべきでないか。

I漁船の研究で,隻数の多い小型漁船も研究対象とすべきではないか。

水研センターは独立行政法人の研究機関であるから委託研究等行政的ニーズに対しては,広く対応する必要がある。
水産工学研究所は,我が国水産業の振興と活性化を目指し,水産工学等に関する研究を基礎から応用まで総合的に実施し,その成果を広く普及していく方針であるが,ご指摘の点も検討したい。

政策の決定にどのような調査研究が必要か,「行政研究連絡会」等を通じて意見交換を行っている。新規事業の課題化の際には,今後とも何時までにどの程度まで解明できるか,研究スケジュール等の綿密な打合せに努める。

次期計画策定時に,漁村の振興に係る研究への対応についても充分検討したい。


現在,研究対象の重点化のため,主に中型漁船を対象とした研究を進めている。今後,社会的ニーズ等を勘案し,研究対象を絞り込む際に,十分検討したい。

6 評価結果の反映方法
改善を要する問題点等 すでにとった措置 今後検討するもの
中課題:「安全性及び採算性向上のための漁業生産技術の開発」を構成する3課題の中にB評価が1課題ある。 「沿岸漁船の省力化のための作業工程の分析手法の開発」の課題で,作業工程分析手法の開発を優先するよう計画を一部修正した。 全体的には,研究室相互の有機的連携や上席研究官の各課題への参画を一層強化するとともに,他機関との連携等により目標達成に必要なデータ及び情報の効率的な収集を図る。
K事業の受託について
平成14年度には,水産庁より4つの新規事業を受託し,業務量が大幅に増加した。
評価委員からも,「これだけの課題や業務を少人数でこなし,成果を上げていることは大変な努力である」との総評がなされている。しかし,予算額や実施期間,人材・人員などから科せられた目標の達成が困難と予想されるものもある。

水産庁以外からの受託研究に関する所内規定を設け,受託の可否を含め事前に審査することとした。 

水産庁委託事業に関しては,予算要求の段階から,研究所と本部,原課との事前調整を行う体勢の強化が必要である。
また,委託された仕事量に応じてその期間中,研究員を補強するような予算や雇用処置が可能な仕組が必要である。


平成14年度研究評価会議開催状況
 
○ 水産土木工学部
1 開催日時:平成15年3月6日(木)  10:00〜17:00
2 開催場所:水産工学研究所 会議室
3 外部委員:木村 晴保(高知大学教授)
 
 
○ 漁業生産工学部
1 開催日時:平成15年3月11日(火) 10:00〜17:00
2 開催場所:水産工学研究所 会議室
3 外部委員:東海 正(東京水産大学教授)   
 
○ 水産情報工学部
1 開催日時:平成15年3月10日(月) 10:00〜17:00
2 開催場所:水産工学研究所 会議室
3 外部委員:青木 一郎(東京大学教授)